パラグラフ・リーディング(3)
・前回の続きとなります。
3.英語の文章での論じ方(論証のパターン)①
・“2”の説明の箇所で,「パラグラフは,文章の先頭にある第1パラグラフを除き,原則として,topicを導く一般的な文からスタートすることが多い」,「この文を,“topic sentence”と呼ぶ」,と説明しました。ここに“英文の論証パターン”の特徴があらわれています。
3-1.日本語の文章での論じ方は?
・日本語の論説文では,文章の最後に結論が置かれる「尾括型」や,文章の最初と最後に結論が置かれる「双括型」が好まれます。
※蛇足ですが、入試等で小論文を書く場合には,「序論・本論・結論」の3段構成にすると,非常におさまりがよい答案になり,高得点が得られるため,尾括型になるケースが多いと思います。
→本来的には好ましくないのですが,実際の試験では「結論が決まっていない状態で答案を書き始め,書いている途中で結論に近づいていく」ことも多いので,文章の最初に結論がくる頭括型や双括型にはなりにくく,結果的に尾括型になることも多いと思います。
→他には,さんざん論じてきたのに,最後でくるっと結論を変えてくるような「ちゃぶ台返し」のような文章も,結論が最後に置かれているという意味では尾括型と言えるでしょう。
3-2.英語の文章での論じ方は?
・英語の論理的な文章では,文章の最初に結論が置かれる「頭括型」が原則です。こうした結論が先にくるスタイルは「“deductive(演繹的)”である」と言われ,英語では“deductive”に書かれていない文章は,もはや論理的な文章ではない扱いを受けます。
・「演繹的」ということは,議論の展開は「抽象→具体」という流れになります。
※「抽象」や「具体」について簡単に言うと,「筆者が用意したすべての事例にあてはまるような『(一般的な)法則・規則・ルール』」が「抽象」部分で,「筆者が用意した事例そのもの」が「具体」部分です。
・英語の論理的な文章において、「『導入』にあたる部分がない,あるいは少ない場合」は,最初の段落からいきなり『法則・規則・ルール』が記されることになるので,「その部分だけ読んでも意味がわからない」という状況に陥ります。
→しかしこれは,英語の文章構造的に仕方のないことなのです。時折,「その部分だけ読んで意味がわかる」ことがありますが,これは「その文章に書かれているトピックについて,十分な予備知識がある」というケースが多いと思います。
※日本語の文章の場合,学術的な文章や教科書などを除いて,馴染みのある身近な話や実体験などの具体的な「導入部分」がかなり手厚く書かれていたり,結論にあたる部分は,最後の方にほんの数行となっていたりする文章が多いと思います。「導入部分」や具体的な話が少ないと,「わかりにくい」という印象を,結論部分が多いと「押しつけがましい」といった印象を与えてしまうからです。
3-3.ポイント
・「導入部分が手厚い」タイプの文章は,その「導入部分」にて,本論や結論に入るための「お膳立て」が十分になされているということなので,やや難しめの話や抽象的な話でも,比較的抵抗が少なく入っていけます。
・しかし,英語の文章では,(特に入試問題の場合は)「導入部分」はかなり薄めか,ほとんど無いくらいで,いきなり抽象度の高い,結論的な文から入ってくることが多いのです。
→もちろん,これについて,日本語と英語の論証パターンの違い,つまり英語の場合は後ろで詳細な説明がなされるということを知っていれば,その段階で諦めモードに入らず,我慢することができます。ところが,こうした英語の文章の構造を知らないと,文章のはじめの方にある抽象度の高い文を読んだ段階で「何を言ってるかわからない」と感じ,それ以上読む気を無くしてしまうことになりがちです。以下に要点をまとめましたので,それを念頭に置きながら,読むようにしてみてください。
3-4.まとめ
・英語の文章は「結論」を先に書き,それに対しての理由などを後ろに書いていく「演繹的(deductive)」なスタイル
→そのため,文章の流れは「抽象→具体」になる
→導入部分がほとんどなく,いきなり結論や抽象的な話から入ってくることが多いので,「とっつきにくい,わかりにくい」といった印象を持ちやすい
→しかし,英語の場合は,後ろで説明していく構造なので,冒頭の結論や抽象的な話を見て,すぐに判断してはいけない。我慢して読み進めることが重要
……続きます。