ひげとらの英語

英語学習のポイントなどをお伝えするブログです。

英作文(基礎編)【1】

1.英作文の一応のゴール=自由英作文

 大学受験生や英語の検定試験を受験される多くの人にとって、英作文学習の一応のゴールは「自由英作文」になると思います。ですが、いきなり自由英作文の問題に取り組むのはほぼ不可能ですね。「何書けばいいの???」、「何から書けば良いの???」って感じになると思います。

 

 とりあえず、大学受験や検定試験の自由英作文は、何らかのテーマが与えられて指定された語数で論理的に英語で文章を書く、といったものになります。そのためには、

  ①論理的な英語の文章の書き方、と

  ②英語での表現力、が必要になってきますね。

 ①については、このブログでは「応用編」で取り扱うことにします。一定のお作法を覚えれば、それ自体はそこまで難しい話ではありません。

 

 問題は②の方ですね。こちらはかなりガッツリと勉強しないといけません。典型的な表現を覚えたり、例文を暗記したりと、結構しんどいです。

 

 で、大学受験生に限って言うと、正直なところ、相当レベルの高い大学を受験して合格する人でも、①と②を兼ねそろえた自由英作文を書ける人はほとんどいません。もうガタガタというか、めちゃくちゃとも言えるようなものでも、合格はできてしまいます。裏を返せば、自由英作文で合否は決まらず、主に読解問題で決まる、ということです。

 

 とはいえ、ノー勉はまずいですから、どうやって勉強していくか、について話していきたいと思います。

 

2.学習の流れ

 基本的な学習の流れは、

  ①典型的な表現を覚える

   ↓

  ②ある程度、典型的な表現を覚えたら、自由英作文の問題にチャレンジ

 ……という感じになります。まあ、とくに真新しいことはないですね。

①典型的な表現を覚える

 何らかのメッセージを英語で伝えるために、英語での言い回しを覚えている必要がありますから、まずは典型的な表現を覚えることからスタートします。

 で、ここで立ちはだかるのが「例文暗記」です。だいたい300~500くらい、例文を暗記する必要がありますが、ぶっちゃけ超絶しんどいんですよね。だいたい、例文集に載っている例文はそれぞれ別個の内容で、ストーリー性は無いことが多いんです。なので、ブツ切りに300例文覚えることになり、これはきっついです。

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 僕はというと、高校時代、とりあえず春休みをつかって、死ぬ気で300覚えました。その後、別な参考書で700覚えました。覚えたといっても、百人一首のように暗唱するというのではなく、あくまでも「日本語を見て、英語にできる」という状態にした感じです。

 で、正直なところ、効果は絶大でした。模試の成績が一気に上がりました。文法問題などでほぼ間違えなくなりました。何が問われているのかが見えてくるようになったんです。

 ただ、無味乾燥な例文300をパワー暗記できる人は良いんですが、そうじゃない人にはお勧めできません。また、僕の場合は、例文暗記の前に、一通り文法知識が入っていたので、結果的に単なるパワー暗記ではなく、理解を伴った暗記になっていたと思います。なので、標準レベルの文法知識が身についていない状態で、ただただ暗記するのはかなり厳しいです。その状態(標準レベルの文法知識が身についてない状態)でも、効果は絶大だと思いますが、挫折率が高すぎると思います。

標準レベルの文法知識が身についている状態とは、『総合英語 Evergreen』(いいずな書店)などのいわゆる文法書を、標準レベルの文法問題集で問題を解きつつ、少なくとも1回は読了している状態を想定しています。文法問題集を併用していなくても、1回通読していれば、標準レベルの文法知識はある程度頭に入っていると考えて良いと思います。文法書もできれば『徹底例解ロイヤル英文法』(旺文社)レベルを通読することが望ましいですが、やはり挫折率が上がるので、一般的には上記のEvergreen等でOKです。

※これは蛇足ですが、個人的には、こういう暗記系は2週間~1ヶ月くらいの短期集中でバーッとやってしまうのがオススメではありますが、時間がある人は1日1文とかで、質問等しながらじっくりやっていくのもアリだと思います。

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 ということで、僕がオススメする学習方法の話をします。例文暗記もやって欲しいんです。効果は絶大ですから。でも、暗記の効率性を考えると「クイズ形式」で学習するべきだと思います。クイズ形式とは「条件英作文問題」や「整序英作文問題」を指します

 つまり、いきなり例文暗記に取りかかるのではなく、まずは穴埋め問題や、語句や語数が指定されている「条件英作文問題」と「整序英作文問題」を解いていくことで、ある程度、典型的な表現や英語で表現するための思考方法を身につけた後、おさらいの意味で、例文暗記をしていくと良いと思います。

 例文暗記については、不要説もありますし、確かに不要な文法単元も無くはないので、僕も一部は暗記しなくてもいいかな、とも思っています。ですが、いわゆる構文集にたくさん載ってくる比較や否定などの文法単元では、基本例文、すなわち、基本パターンを覚えていることが、英作文だけでなく読解にも役立ってきますので、学習の効率を考えても、その手の分野では特に例文暗記すべきだと思います。

 このブログでは、主にかつて早稲田大学の法学部で出題されていた「条件英作文問題」などを通じて、典型的な表現に触れていきたいと思います。

 

 典型的な表現の習得にせよ、例文暗記にせよ、文法単元別にやると、けっこう飽きちゃうんですよね笑。「仮定法」とか「比較」とか「否定」とか、そういう典型表現や慣用表現がやたらと出てくる特定の単元については、どこかでその単元だけ網羅的にやっておかないとダメなんですが、全部を一から単元別にやり始めると、単元ごとの重さが違いすぎることもあって、だいたい途中で飽きて挫折します笑。だいたい最初は「5文型」とか「時制」なんですが、あんまり面白くない上に、「時制」などは奥が深くて、英作文向けに学習するとめちゃくちゃ時間がかかります。

 なので、ランダムに出題される問題を通じて、「へぇ~、こんな風に言うんだね」とか「こんなの思いつかないわ!」とか、そういった感じで、楽しみながら学んでいってもらえるとよいと思います。

 解説の方では、結構細かいところやマニアックなところまで説明しますので、難しく感じたら「ふうん」って感じで流してくださいね。いきなり覚える必要は全然無いです!

②自由英作文の問題にチャレンジ

 ある程度、典型的な表現を覚えてきたら、自由英作文の問題にチャレンジしていきます。このブログでは「応用編」で扱うことにします。

 このときに、気をつけて欲しいのが、できる限り、問題作成者(出題者)が提示している「公式の解答例」がある素材を活用するべき、ということです。

 2019年度から、多くの大学で「模範解答例」が示されるようになりました。これにより、実際の出題者が「どのレベルの解答を期待しているのか?」がわかるようになりました。

 それまでは、赤本などの解答例を参考にするしかなかったのですが、あの解答例は受験生にはあまり参考にはなりませんでした(いや、むしろ良くも悪くも参考程度という感じでしょうか)。というのも、赤本などに記載されている解答例は、「どこかの先生が、いろいろ参考資料を使って調べつつガッツリ時間を使って完璧を目指して作成した解答」であるため、とても受験生試験時間内に作成できるレベルのものとは言えないですし、その意味で出題者の要求の遙かに上をいく解答例だったからです。要するに、現実的な解答ではない、ということですね。単純に間違っているとかもありますが。。。

※当たり前のことですが、受験生は「試験時間という限られた時間内で、与えられた問題についてできる限り解答し、合格点を目指していく」というルールのもとで、解答を作成することになるので、参考資料は使えませんし、時間も無制限ではありません。つまり、赤本などの解答例を作成している先生は、受験生とは違ったルールのもとで、解答を作成しているわけですから、その解答例は、そういう前提で見ないとダメということなのです。

 もちろん、出題者が用意した解答例も、とても受験生が書けるものではないケースもありますが、彼ら出題者の要求している水準は、とりあえずくみ取ることができ、学習の指針に活用できます

 僕がオススメなのは英検2級で出題されている自由英作文の問題とその解答例です。英検協会が提示している解答例は平易な表現をつかって、うまく書いているなあと思います。平易でシンプルなんですが、大学受験生なら、あれくらい書ければ、ほぼ最高レベルといってもいいかなという感じです(実際に見ていただければ、レベル感がわかると思います。そこまでハイレベルではないと感じる人が多いと思います)。是非一度、見てみてください。

 

 次回以降は、実際に問題を解いていくことにします。

パラグラフ・リーディング(9)

・今回から,「パラグラフ・リーディング」と,それに併用する「視点」について,まとめていきたいと思います。

9.パラグラフ・リーディングの役割と設問を解くための視点

・「パラグラフ・リーディング」とは,「ある程度論理的に書かれた英文は,一定のお作法に基づいて,すなわち『パラグラフ・ライティング』のルールに基づいて書かれていることが多い。そのため,『パラグラフのどこに何が書かれるのか』がある程度決まっていることから,それを逆手にとることで『速読』や『正確な読解』が可能になる読解法」のことを言います。

→したがって『パラグラフ・ライティング』のルールに基づいて書かれていない文章を読む場合には,あまりメリットを感じられません。実際,入試問題等では『パラグラフ・ライティング』のルールにしたがっていない文章にしばしば遭遇してしまいます。

・また,「パラグラフ・リーディング」において“topic sentence”とは,「後ろで具体例や詳細な説明,データによる証明などのサポートが必要な語句(controlling idea(s))を含んでいて,実際にその文に対してのサポート部分がある文」のことを指すので,「筆者の主張を含んでいる文」とは限りません

→そのため,仮に「パラグラフ・ライティング」のルールに基づいて書かれている文章だったとしても「『筆者の意見・主張』がどのように導かれるか,論じられるのか」などについての「大きな論理構造(論証のパターン)」についての知識がないと,結局のところ「“topic sentence”や『サポート部分』がどこにあたるかはわかったものの,それがわかっただけで,何が言いたいのかがわからない」といった状況に陥ってしまうことがあります。

・したがって,純粋な意味での「パラグラフ・リーディング」の知識だけでは「不十分」で,およそ論理的な文章を読む場合には(さらに設問を解く場合には)「『筆者の意見・主張』がどのように導かれるか」などについての「大きな論理構造(論証のパターン)」についての知識も必要ということになります。

※この「大きな論理構造(論証のパターン)」についての知識は,「特別な知識」というわけではありません。日本語の文章を読む際,現代文の論説文系の問題を解く際に利用している視点です。

☞つまり,「論理的な英文」を読む場合には,①「日本語,英語問わず,論理的な文章によく見られる思考法,論証のパターンに関する知識」を持っている上で,英語の論理的な文章には一定の書き方のルールがあることから,それを逆手にとった②「パラグラフ・リーディングの知識」があると,「鬼に金棒」だ,というわけです。

 

・日本語の論説文を読む際は「パラグラフ・リーディング」は使えないので,①の知識だけで読んでいくことになります。一方,英語の論説文の場合は,②も使えるので,①+②で読んでいくと,非常に効率的ではないか,という訳です。

→このように言うと,「パラグラフ・リーディング」は「補助的な役割」のように思われてきます。実際には「補助的」という訳では無いのですが,高校生や大学受験生にとっては,そこまで論理的な文章を読んできたわけでもないと思いますし,①の知識もあやふやな人が多いと思いますので,まずは①の知識を確実にする,という意味で「補助的」と考えておくと良いと思います。

パラグラフ・リーディング(8)

・前回は「パラグラフの基本構造」から外れるパターンで,「筆者の主張・意見」をとらえるための方法について説明しました。

・今回は,それの補足として「筆者の主張・意見」が述べられる文で用いられやすい表現について紹介していきたいと思います。

・注意点としては,あくまでも「用いられやすい」というだけで,これらの表現があるからといって必ずしも「筆者の主張・意見」が述べられている,というわけではありません。また,「筆者の主張・意見」が述べられている箇所に,必ずこうした表現がある,というわけでもありません。
☞これらの表現が出てきたときに,「あ,『筆者の主張・意見』が述べられているかも…」と思えるようにすれば大丈夫です。

・一番最後にも記しましたが,絶対的なルールではないので,「こういうの出てきたら気をつけようね」という程度の認識でよいと思います。

8.「筆者の主張・意見」が述べられている箇所に登場しやすい表現

①現在形・現在完了形で書かれている
☞通常,「過去形」で書かれている場合は「歴史的事実」と考えます(もちろん,ケースバイケースなのですが…)。

②法助動詞(can, may, shouldなど)
☞助動詞のうち,be動詞や「一般動詞の疑問文・否定文を作る際のdo, does, did」,「完了形のhave, has, had」ではない,can, will, may, shouldなどの助動詞を「法助動詞」といいます。

③相対的表現・主観的表現・主観的評価を表す語句
☞goodやbadのように,人によって,あるいは時代や文化によって判断がことなるような語句のことです。

④Iが主語の,“I think [hope, wish, want] …”といった表現
☞これの注意点は,thinkなどの動詞の後ろにくるthat節の中が,過去形の場合でも,“I think (that) S + V...”を1つのカタマリととらえ,全体として「筆者の主張・意見」になっていると考えます。

⑤seemやappearなどの推量を表す動詞

⑥比喩表現

・これらのものは「こうした表現が出やすい」というものなので,ざっくりと認識しておいていただく程度でよいと思います。

パラグラフ・リーディング(7)

・前回は「パラグラフの形」について,基本形,応用形,“topic sentence”を含まない形と大きく分けて3つのパターンについて説明しました。

・そして,パラグラフ・リーディング(2)の記事において,

「複数のtopicを述べる場合は,それぞれのtopicごとに,段落分けをする必要」がある,ということを説明しました。

・つまり,英語の段落分けは「『1つのパラグラフには,1つのtopicしか置けない』というルール」に基づいてなされる,ということになります。

しかし,実際の英文を読んでいると,このルールは必ずしも徹底されているとは言えません(パラグラフ・リーディング(1)の記事を参照)。
→たとえば,前回説明したような「パラグラフの形」は,本来は1つのパラグラフにつき1つしか無いはずなのですが,1つのパラグラフに複数ある場合があります(“topic sentence”が複数あるとしか読めない場合など)。また,“topic sentence”や「サポート部分」などの要素ごとに,パラグラフが別れてしまっている場合もあります。

・結局のところ,ルールはあるものの,筆者によってまちまち,というところがあるので,読み手の方でこうしたバリエーションに対応していくしかありません

☞こうしたバリエーションに対応するためのポイントは,「『大きな論理構造』をとらえるようにする」ことです。今回は,知っておくべき「大きな論理構造」を3つ説明ししていきます。

※実際,“パラグラフ・リーディング”を使っていく上で一番問題になってくるのは,「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」とは限らない,ということです。
→私の分類では①「意見・主張を述べる文」と③「含みを持たせた表現があり,さらに意見・主張を述べる文」については「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」となります。
 しかし,②「含みを持たせた表現になっている文」については「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」になりません。そのため,この部分だけをとらえると,“topic sentence”を把握することにあまりメリットを感じないかもしれません。
 そこで,説明する人によっては,①や③のものだけを“topic sentence”とすることで,「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」としている場合があります。これはこれで「速読」を目的としていく方法としては良いと思います。
 結局,「何を目的にするか?」で,「“topic sentence”の定義」すなわち「何を“topic sentence”にするのか?」が変わってくるわけです。私は“topic sentence”を把握することの目的として,「その後の議論展開を予想すること(結果,速読につながります)」,「サポート部分との対応関係を見ることで,特に抽象語・類義語などを正しく解釈すること」を考えています。したがって,「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」とは限らない,立場なので,設問の解答等に必要な「筆者の主張・意見」を捕捉していくためには,多少大げさに言うと,別な視点を使っていることになります。

7.大きな論理構造

・大きな論理構造をとらえる場合には「ディスコースマーカー」が大変役に立ちます。それぞれの型で,どのような「ディスコースマーカー」が使われるのかの例をあげますので,参考にしてください。

7-1.「①一般的な考え→②筆者の主張・意見」型

・1つ目は日本語の文章でもよく出てくる“「①一般的な考え→②筆者の主張・意見」型”です。

・このタイプは,まず①で「世間一般の人の考え」や「ふつうに考えた場合の結論」が述べられます。その後②で「実はそれは違うんだよ」,「筆者としてはこう考えているよ」と述べていきます
→「みんなはこう考えていると思うんだけどね,実は違うんだよ」という書き方で,「一般の人々の誤解をといていく」感じです。

・①と②が1文で書かれている場合,その文が“topic sentence”となる可能性が高いですが,2文以上に分かれている場合,(通常は)先に出てきた方を“topic sentence”として考えます。しかし,実際に問題を解いていく場合,そのように細かく切り刻んで考えることはあまり有益ではないので,「『1つの』大きな論理構造」としてとらえておく方が良いと思います。

ディスコースマーカー】

・①の部分:generally, usually, traditionally, you may ~, many people, ……といった「世間一般・大衆・旧来・伝統的・典型的」などの意味を持つ語句が用いられる。

・②の部分:but, however, yetなどの「逆接」を表すディスコースマーカーが用いられる。

【例】2012年センター試験第6問

Traditionally, people who procrastinate have been considered lazy, but research tells us that this is not true.
*procrastinate:(するべきことを)先延ばしにする

「伝統的に,先延ばしにする人々は怠惰であると考えられてきたが,研究は私たちにそれが誤りであるということを示す」

青字部分が①「一般的な考え」の部分赤字部分が②「筆者の主張・意見」の部分です。①にはtraditionally「伝統的に」,②にはbut「しかし」というディスコースマーカーが見られます。

※この文が次のように2文に分かれた場合などは「どちらが“topic sentence”か?」と考えてもあまりメリットがないので,「一般的考え→筆者の主張・意見」という論理構造をとらえ,セットで(強いて言うならセットで“topic sentence”として)考えた方がスムーズに解釈できます。

Traditionally, people who procrastinate have been considered lazy. However, research tells us that this is not true.

※読んでいるときに,「一般的な考え」を述べる箇所に遭遇したら「あ,一般的な考えの部分がでてきたぞ。そうするとこれはひっくり返される可能性が高いな!」と思うようにしてください。そうすると後ろで「あ,逆接のマーカーだ!やっぱり筆者の主張・意見が出てきた!」と気づけるようになります。

7-2.「①筆者の主張・意見→②予想される反論→③再反論」型

・7-1“「①一般的な考え→②筆者の主張・意見」型”をより重厚に,丁寧なスタイルで述べるパターンです。結論部分を最初に述べているので,演繹的な議論展開を徹底したスタイルともいえます。

はじめに「筆者の主張・意見」が提示され,次にそれに対して「予想される反論」が述べられます。その後「予想される反論」が,最初の「筆者の主張・意見」を否定しない(矛盾しない,論破しない)内容であることを示す形で「再反論」がなされます。

ディスコースマーカー】

②の部分:以下のような「譲歩」のディスコースマーカーが置かれます

・of course
・certainly
indeed
・Ture, …
・it is certain that …
・it is true that …
・may / might
・can / could
・would 
 ……など

③の部分:以下のような「逆接」のディスコースマーカーが置かれます

・but
・however
・yet
・nevertheless
・although ~
・though
・even if ~
・not ~ but …
・not ~. Instead …
 ……など

7-3.Question-Answer構造

・このタイプは,「いったいこれはどういうことか?」「それは~である」といった形で,「筆者自身が疑問文の形で問題提起しながら,筆者自身でそれに答えていく」というスタイルです。自らが疑問文の形で問題提起しているので,論点が明確になりやすいです。
→分析上は,最初に出てくる「Questionの部分」が“topic sentence”,「Answerの部分」が「サポート部分」となりますが,これもQuestionとAnswerをセットで1つの論理構造としてとらえた方がわかりやすいです。

 

パラグラフ・リーディング(6)

・それでは,今回から1つ1つのパラグラフの構造,「パラグラフの基本形」について,説明していきたいと思います。

6.パラグラフの形

6-1.基本ルール

・1つのパラグラフは4~8文で構成される。

1つのパラグラフに置くことのできるtopicは,原則1つまで。

→そのため,“topic sentence”も,原則として1つしか置くことができない。

“topic sentence”は必ず置かれるものではなく“topic sentence”の無い「導入に特化したパラグラフ」や「サポートに特化したパラグラフ」を作ることもできる

6-2.パラグラフのスタイル(基本形)

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6-3.パラグラフのスタイル(応用形)

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6-3.パラグラフのスタイル(“topic sentence”が無いもの)

(1)“導入”に特化したパラグラフ
  ・特に,第1パラグラフに多いです。
  ・4文以上,導入文が続いた場合は,このタイプの可能性が高いです。

(2)“サポート”に特化したパラグラフ
  ①何らかのプロセスを説明するためのもの
  ②用語を定義するためのもの
  ③ある概念をより明確にするためのもの,……などがあります

(3)“まとめ”に特化したパラグラフ
  ①大きめの“topic”についての議論が終了する場合
  ②文章の最後の方に置かれ,その文章のまとめをする場合
   ……などがありますが,置かれないことも多いです。

パラグラフ・リーディング(4)

・続きです。

4.英語の文章での論じ方(論証のパターン)②

・今回は,何か相手に伝えたいことがある場合,それをどのように語っていくのか,すなわち,ある事柄について「論理的」に述べる際の“基本ルール”について説明していきたいと思います。

・「論理的」に述べる技法を説明するときに,よく持ち出されるのがスティーヴン・トゥールミンによる「トゥールミン・モデル」です。このモデルの基本の部分「①主張・②根拠・③論拠」はディベートをする際の基本形態とされ,最低限必要な要素ということで,しばしば説明がなされます。
→かつて東進ハイスクールで講師をされていた横山雅彦氏の提唱する「ロジカル・リーディング」はこれをベースにしているようです。
→また,それ以外の要素として,「④裏付・⑤反証・⑥強度」というものがあり,これら6つのパーツがすべてそろった論理は“プリマファシエ(prima facie)”と呼ばれます。
※“プリマファシエ(prima facie)”は,法律学でも登場し,「一応の推定[証拠]」という不思議な日本語訳がついています。実際の意味するところは,「反証されなければ,事実を証明するのに十分な証拠」という意味です。原則として,原告(訴えを提起した側)は,自らの訴えが正しいことを主張する証拠を提示する必要があります。この場合の証拠のことを“プリマファシエ”と呼びます。被告側の反論によっては,原告の示した証拠は,事実を証明するのに不十分と判断されることもあるので「一応」なのです。

・しかし,実際に英文を読み,問題を解く場合,そこまで詳細に論理分析をしている時間はないので,「基本の3要素」のみを考え,それをパラグラフ・リーディング向けにアレンジしたものを「基本の論理モデル」ということにします(下図参照)。

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・この図に基づいて,英語の論説文に,この基本の論理モデルをあてはめると,英語の文章では,まず“topic sentence”と呼ばれる「読み手に疑問を抱かせるような内容」を含む文を掲げ,その疑問を解消するために,“topic sentence”のサポートとして,「理由+理由の根拠+具体例」が述べられていく,という構造になるということになります。この基本のパターンを頭に入れておくと,英語の文章が読みやすくなってくると思います。

※パラグラフ・リーディング(2)の記事では,“topic sentence”を,①意見を述べる文②含みを持たせた表現になっている文③①と②の両方を含む文,の3つに分類しました。上記のモデルにおける“topic sentence”は,基本的に①か③の“topic sentence”を指すと考えてください(これについては,パラグラフ・リーディング(5)の記事で説明します)。

※理由の根拠とは,理由の信憑性(なぜその理由が信用に値するか)を示す部分のことを指します。それほど学術的・専門的な文章でない場合や,あまりに自明のことすぎて,理由の根拠が不要な場合は,理由の根拠部分は書かれないことも多いです。実際,「ある研究では…」や「研究者たちは…」といったフレーズをつけることで,この理由の根拠部分を示しているものとみなすものが多いです。

 

……続きます。

パラグラフ・リーディング(3)

・前回の続きとなります。

3.英語の文章での論じ方(論証のパターン)①

・“2”の説明の箇所で,「パラグラフは,文章の先頭にある第1パラグラフを除き,原則として,topicを導く一般的な文からスタートすることが多い」,「この文を,“topic sentence”と呼ぶ」,と説明しました。ここに“英文の論証パターン”の特徴があらわれています。

3-1.日本語の文章での論じ方は?

日本語の論説文では,文章の最後に結論が置かれる尾括型や,文章の最初と最後に結論が置かれる双括型が好まれます。

※蛇足ですが、入試等で小論文を書く場合には,「序論・本論・結論」の3段構成にすると,非常におさまりがよい答案になり,高得点が得られるため,尾括型になるケースが多いと思います。
→本来的には好ましくないのですが,実際の試験では「結論が決まっていない状態で答案を書き始め,書いている途中で結論に近づいていく」ことも多いので,文章の最初に結論がくる頭括型や双括型にはなりにくく,結果的に尾括型になることも多いと思います。
→他には,さんざん論じてきたのに,最後でくるっと結論を変えてくるような「ちゃぶ台返し」のような文章も,結論が最後に置かれているという意味では尾括型と言えるでしょう。

3-2.英語の文章での論じ方は?

英語の論理的な文章では,文章の最初に結論が置かれる「頭括型」が原則です。こうした結論が先にくるスタイルは「“deductive(演繹的)”である」と言われ,英語では“deductive”に書かれていない文章は,もはや論理的な文章ではない扱いを受けます。

演繹的ということは,議論の展開は「抽象→具体」という流れになります。

「抽象」「具体」について簡単に言うと,「筆者が用意したすべての事例にあてはまるような『(一般的な)法則・規則・ルール』」「抽象」部分で,「筆者が用意した事例そのもの」「具体」部分です。

・英語の論理的な文章において、「『導入』にあたる部分がない,あるいは少ない場合」は,最初の段落からいきなり『法則・規則・ルール』が記されることになるので,「その部分だけ読んでも意味がわからない」という状況に陥ります。
→しかしこれは,英語の文章構造的に仕方のないことなのです。時折,「その部分だけ読んで意味がわかる」ことがありますが,これは「その文章に書かれているトピックについて,十分な予備知識がある」というケースが多いと思います。

日本語の文章の場合,学術的な文章や教科書などを除いて,馴染みのある身近な話や実体験などの具体的な「導入部分」がかなり手厚く書かれていたり結論にあたる部分は,最後の方にほんの数行となっていたりする文章が多いと思います。「導入部分」や具体的な話が少ないと,「わかりにくい」という印象を,結論部分が多いと「押しつけがましい」といった印象を与えてしまうからです。

3-3.ポイント

・「導入部分が手厚い」タイプの文章は,その「導入部分」にて,本論や結論に入るための「お膳立て」が十分になされているということなので,やや難しめの話や抽象的な話でも,比較的抵抗が少なく入っていけます。

・しかし,英語の文章では,(特に入試問題の場合は)「導入部分」はかなり薄めか,ほとんど無いくらいで,いきなり抽象度の高い,結論的な文から入ってくることが多いのです。
→もちろん,これについて,日本語と英語の論証パターンの違い,つまり英語の場合は後ろで詳細な説明がなされるということを知っていれば,その段階で諦めモードに入らず,我慢することができます。ところが,こうした英語の文章の構造を知らないと,文章のはじめの方にある抽象度の高い文を読んだ段階で「何を言ってるかわからない」と感じ,それ以上読む気を無くしてしまうことになりがちです。以下に要点をまとめましたので,それを念頭に置きながら,読むようにしてみてください。

3-4.まとめ

英語の文章「結論」を先に書き,それに対しての理由などを後ろに書いていく演繹的(deductive)」なスタイル
→そのため,文章の流れは「抽象→具体」になる
→導入部分がほとんどなく,いきなり結論や抽象的な話から入ってくることが多いので,「とっつきにくい,わかりにくい」といった印象を持ちやすい
→しかし,英語の場合は,後ろで説明していく構造なので,冒頭の結論や抽象的な話を見て,すぐに判断してはいけない我慢して読み進めることが重要

 

……続きます。