ひげとらの英語

英語学習のポイントなどをお伝えするブログです。

パラグラフ・リーディング(7)

・前回は「パラグラフの形」について,基本形,応用形,“topic sentence”を含まない形と大きく分けて3つのパターンについて説明しました。

・そして,パラグラフ・リーディング(2)の記事において,

「複数のtopicを述べる場合は,それぞれのtopicごとに,段落分けをする必要」がある,ということを説明しました。

・つまり,英語の段落分けは「『1つのパラグラフには,1つのtopicしか置けない』というルール」に基づいてなされる,ということになります。

しかし,実際の英文を読んでいると,このルールは必ずしも徹底されているとは言えません(パラグラフ・リーディング(1)の記事を参照)。
→たとえば,前回説明したような「パラグラフの形」は,本来は1つのパラグラフにつき1つしか無いはずなのですが,1つのパラグラフに複数ある場合があります(“topic sentence”が複数あるとしか読めない場合など)。また,“topic sentence”や「サポート部分」などの要素ごとに,パラグラフが別れてしまっている場合もあります。

・結局のところ,ルールはあるものの,筆者によってまちまち,というところがあるので,読み手の方でこうしたバリエーションに対応していくしかありません

☞こうしたバリエーションに対応するためのポイントは,「『大きな論理構造』をとらえるようにする」ことです。今回は,知っておくべき「大きな論理構造」を3つ説明ししていきます。

※実際,“パラグラフ・リーディング”を使っていく上で一番問題になってくるのは,「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」とは限らない,ということです。
→私の分類では①「意見・主張を述べる文」と③「含みを持たせた表現があり,さらに意見・主張を述べる文」については「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」となります。
 しかし,②「含みを持たせた表現になっている文」については「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」になりません。そのため,この部分だけをとらえると,“topic sentence”を把握することにあまりメリットを感じないかもしれません。
 そこで,説明する人によっては,①や③のものだけを“topic sentence”とすることで,「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」としている場合があります。これはこれで「速読」を目的としていく方法としては良いと思います。
 結局,「何を目的にするか?」で,「“topic sentence”の定義」すなわち「何を“topic sentence”にするのか?」が変わってくるわけです。私は“topic sentence”を把握することの目的として,「その後の議論展開を予想すること(結果,速読につながります)」,「サポート部分との対応関係を見ることで,特に抽象語・類義語などを正しく解釈すること」を考えています。したがって,「“topic sentence”=『筆者の主張・意見』」とは限らない,立場なので,設問の解答等に必要な「筆者の主張・意見」を捕捉していくためには,多少大げさに言うと,別な視点を使っていることになります。

7.大きな論理構造

・大きな論理構造をとらえる場合には「ディスコースマーカー」が大変役に立ちます。それぞれの型で,どのような「ディスコースマーカー」が使われるのかの例をあげますので,参考にしてください。

7-1.「①一般的な考え→②筆者の主張・意見」型

・1つ目は日本語の文章でもよく出てくる“「①一般的な考え→②筆者の主張・意見」型”です。

・このタイプは,まず①で「世間一般の人の考え」や「ふつうに考えた場合の結論」が述べられます。その後②で「実はそれは違うんだよ」,「筆者としてはこう考えているよ」と述べていきます
→「みんなはこう考えていると思うんだけどね,実は違うんだよ」という書き方で,「一般の人々の誤解をといていく」感じです。

・①と②が1文で書かれている場合,その文が“topic sentence”となる可能性が高いですが,2文以上に分かれている場合,(通常は)先に出てきた方を“topic sentence”として考えます。しかし,実際に問題を解いていく場合,そのように細かく切り刻んで考えることはあまり有益ではないので,「『1つの』大きな論理構造」としてとらえておく方が良いと思います。

ディスコースマーカー】

・①の部分:generally, usually, traditionally, you may ~, many people, ……といった「世間一般・大衆・旧来・伝統的・典型的」などの意味を持つ語句が用いられる。

・②の部分:but, however, yetなどの「逆接」を表すディスコースマーカーが用いられる。

【例】2012年センター試験第6問

Traditionally, people who procrastinate have been considered lazy, but research tells us that this is not true.
*procrastinate:(するべきことを)先延ばしにする

「伝統的に,先延ばしにする人々は怠惰であると考えられてきたが,研究は私たちにそれが誤りであるということを示す」

青字部分が①「一般的な考え」の部分赤字部分が②「筆者の主張・意見」の部分です。①にはtraditionally「伝統的に」,②にはbut「しかし」というディスコースマーカーが見られます。

※この文が次のように2文に分かれた場合などは「どちらが“topic sentence”か?」と考えてもあまりメリットがないので,「一般的考え→筆者の主張・意見」という論理構造をとらえ,セットで(強いて言うならセットで“topic sentence”として)考えた方がスムーズに解釈できます。

Traditionally, people who procrastinate have been considered lazy. However, research tells us that this is not true.

※読んでいるときに,「一般的な考え」を述べる箇所に遭遇したら「あ,一般的な考えの部分がでてきたぞ。そうするとこれはひっくり返される可能性が高いな!」と思うようにしてください。そうすると後ろで「あ,逆接のマーカーだ!やっぱり筆者の主張・意見が出てきた!」と気づけるようになります。

7-2.「①筆者の主張・意見→②予想される反論→③再反論」型

・7-1“「①一般的な考え→②筆者の主張・意見」型”をより重厚に,丁寧なスタイルで述べるパターンです。結論部分を最初に述べているので,演繹的な議論展開を徹底したスタイルともいえます。

はじめに「筆者の主張・意見」が提示され,次にそれに対して「予想される反論」が述べられます。その後「予想される反論」が,最初の「筆者の主張・意見」を否定しない(矛盾しない,論破しない)内容であることを示す形で「再反論」がなされます。

ディスコースマーカー】

②の部分:以下のような「譲歩」のディスコースマーカーが置かれます

・of course
・certainly
indeed
・Ture, …
・it is certain that …
・it is true that …
・may / might
・can / could
・would 
 ……など

③の部分:以下のような「逆接」のディスコースマーカーが置かれます

・but
・however
・yet
・nevertheless
・although ~
・though
・even if ~
・not ~ but …
・not ~. Instead …
 ……など

7-3.Question-Answer構造

・このタイプは,「いったいこれはどういうことか?」「それは~である」といった形で,「筆者自身が疑問文の形で問題提起しながら,筆者自身でそれに答えていく」というスタイルです。自らが疑問文の形で問題提起しているので,論点が明確になりやすいです。
→分析上は,最初に出てくる「Questionの部分」が“topic sentence”,「Answerの部分」が「サポート部分」となりますが,これもQuestionとAnswerをセットで1つの論理構造としてとらえた方がわかりやすいです。